相続放棄と光熱費
1 光熱費の支払いをしても相続放棄できる?
相続放棄の相談を受けていて、一番多いといってもいいのが「電気代の請求がきているけど、支払ってもいいですか?」という質問です。
「単純承認」に該当する行為を行ってしまうと、相続放棄することができなくなります。
そのため、光熱費の支払・解約が単純承認に該当しないか、以下場合分けしていきます。
2 被相続人の財産から支払う場合
被相続人が電気代な光熱費の契約者になっていて未払があると、相続人が支払わなければなりません。
しかし、この未払金などを、被相続人の財産から支払ってしまうと、被相続人の財産を処分したとして「単純承認」に該当する可能性が高いです。
そのため、相続放棄を検討しているのであれば、被相続人の財産から光熱費の支払いを行うことは回避した方が良いでしょう。
3 相続人の財産から支払う場合
相続人の財産から支払う場合には、被相続人の財産を処分したことにはならないため、「単純承認」には該当しません。
4 解約する場合
被相続人が光熱費の契約者になっている場合、解約したり、名義変更することが単純承認に該当しないのでしょうか。
この点については、明確な裁判例はありませんが、財産を処分・費消したときには該当しないとして、解約手続きは「単純承認」に該当しない可能性が高いです(ただし、事情によって結論が異なり得るので、詳細は専門家に相談しましょう)。
未払いがあるものの電気などの供給を続けてほしい場合には、未払い分を相続人(自分)の財産から支払、名義変更することが考えられるでしょう。
5 日常家事債務は支払わなければなりません
相続放棄をすると、光熱費の未払い分も支払う義務がなくなります。
しかし、「日常開示債務」に該当する場合には、支払義務が残りますので、注意が必要です。
日常家事債務については、民法761条において、夫婦の一方が日常家事に関して第三者との法律行為によって生じた債務については、連帯してその債務を負うものと定められています。
日常家事には、日常的な衣食住にかかる料金、水道光熱費、日常的な教育費などが該当するとされています。
したがって、相続人が被相続人の配偶者の場合、光熱費に未払がある場合、日常家事債務として、相続人自身の債務として支払いをしなければなりません。
連帯債務を負っているためです。
相続放棄したとしても、日常家事債務については注意が必要です。